北海道大学のスノーボードサークルの繋がりで出会った赤井成彰(以下、ナル)は、トラックの荷台にDIYで家を作って住んでいます。北大を卒業して超優良企業に勤めていたにも関わらず4年前にその生活をやめ、アメリカ移住を目指し単身ハワイに乗り込みました。世間一般的に見ればかなりトリッキーなムーブですが、そこにはナルなりの哲学と一貫した行動がありました。”生活冒険家”の肩書のもと、現在は神奈川の山奥で「動く村」の村長をやっているナルの生き方をフィーチャーします
会社を辞めてモバイルハウスで生活するって言ってた時からどれくらい経った?
なんだかんだもう4年経ったね。大手玩具メーカーでサラリーマン4年やってそっから脱サラして4年。振り返ってみると早いな。
241:おはスタに出てたもんな笑
世間的に見たら安定って言われる職業やと思うけど、実際はどうやったん?
そもそも試しにサラリーマンを「やってみよう」って感じやったかな。「ハワイで自給自足したい」っていう風に大学3年の時に思ったんやけど就職活動があった。そもそもやるかどうか悩みんだけど「やらずにNOも違うな」と思った。ほんで、就活をやってみたら意外とそれがおもしろくて。自己分析は「自分ってこんな人間なんや」とか分かったり、「社会ってこんな感じなってんねや」みたいな。そういうテンションやった。
無事就職した後は普通にサラリーマンをやってたんやけど、1年目で「40年間これやるか?」って思って「いや、やらんわ」って思った。2年目くらいからは「どうやってハワイに移住しようか」とかずっと考えてた。で、会社と並行して色々調べてたんやけどアメリカへの移住は難易度高いことが分かって「行ってどうにかするしかない」ってなった。そっから不動産投資とかしながらお金の勉強して、4年目に辞める準備ができたからそこで辞めてハワイに行ったよ。
すげえ順調に進んでる感じがするけどハワイではどうだったの?
ここまでは順調やったんよ。ほんで準備ができて「いざ、行こう」と思ったら住む予定のところの火山が過去最大の噴火。2018年の5月やったね。でもこっちは腹括ってるから「行くしかねえ」みたいな状況よ。強行で行ったけど、到着したら全身に蕁麻疹がでちゃって。そのまま数週間過ごしたけどある日、腰が痛すぎて立てなくなった。それが尿管結石で死ぬほど痛くて。「こんなに痛い思いしたことない」ってくらい痛かった。これはいよいよ流れおかしいから「次なんかあったら帰国しよう」思った矢先、ゲストハウスをチェックアウトする時に自分のバックパックがないことに気付いたんよ。財布、パスポート、パソコン、ドローンとか大事なもの全部入ってた。もうそれでゲームオーバー。これ1ヶ月の出来事やで?「これ以上おったらもう死ぬわ」って思って帰国を決断した。
241:実はとんでもない目に遭ってたんやな。
その状況から帰国してモチベーションは失わなかった?
職失い、金失い、夢失い、彼女失いでマジで何もなくなった。人生リセットボタン押したみたいな感じになって結構悩んだよ。
241:大変だったと思うけど、ストーリーとしてはかなりおもしろいな。
そこからどうしたの?
友達に「ずっとやりたかったことをやりなさい」っていうベストセラーを勧められたのよ。まあもうなんもやることないし、読んでみるかと思ってその本読んでた。タイトル的に自己啓発っぽいんやけど、そういう感じではなくて「これをやってみなさい」っていうミッションが与えられるスタイルだった。その中の1つに「思いつくままにやりたいこと10個やりなさい」ってのがあって、思いつくままに「畑やりたい、音楽やりたい、家つくりたい」とか書いてた。
畑は庭でやってみたり、音楽はGarage Bandで作ってみたり。家はすぐやれないなあと思ってたらFacebookのタイムラインにモバイルハウス制作ワークショップみたいなのが流れてきた。「お、家造りきたやん」みたいな感じでテンション上がったなあ。よく見たらその会場が”廃材エコビレッジゆるゆる"っていう前から気になってたとこやって、「これは運命や」と思った。「1週間で1つモバイルハウスを作る」っていう内容で、そのワークショップがめっちゃ楽しくて、工具が使えるようになるし、家って自分で全然作れるやんみたいな。ここで、モバイルハウスがおもしろいなって思って、「自分のモバイルハウス作って暮らそう」っていうのをやろうと決心した。
それが2018年の10月、会社辞めて半年経った28歳の時やったね。
トラックの荷台に自分で作ったモバイルハウスの生活がはじまるわけやん、不安とかなかったん?
正直、あまり不安とかはなかったかな。ある種”生活実験”だと思ってたからっていうのはある。トラックの荷台に家作って住んだらおもろそうやし、住めるかどうかをやること自体に社会的意義とか価値があると思った。だめやったとしても「住めませんでした」っていう結果が発信されること自体がおもろい。だから不安じゃなかったよ。
241:結構長い間住んでるよね?
今も住んでるし3年以上住んでるよ。
毎日車を停めて寝る場所を見つけるの大変じゃないの?たまに車泊するとそれが大変なんだよなあ。
さすがマジでそうなんよ。最初は”生活冒険家”っていう肩書で「全国のおもしろい暮らしを探す」っていうテーマで動き回ってた。毎日泊まる場所を探すのは大変だったよ。その活動のサブテーマは「新しい幸せな暮らしを探しに行こう」っていうテーマにしていて、自分が幸せかどうかっていうのを大事にしてて、幸せかどうかっていうのをずっと自問自答してた。それでいうと幸福度は明らかにサラリーマン時代よりあがった。
でも足りないものがあるなとそこで思って、それってなんだろうって考えた時「人とのつながりと好きなだけ止めて置ける場所」つまり”ホーム”やなって思った。そこで、次はホームのDIYをしようと思ってコミュニティを作る活動を始めた。それが2年前やなあ。
241:ここまでの流れを整理すると、まずはトラックの荷台に家を作ってそこで生活することにした。その後、生活冒険家として全国を回ってみたら自分の幸せに足りないのが人とのつながりと車を止めて置ける場所(ホーム)ってことが分かって、今はコミュニティを運営してるってこと?
そうだね!
ナルが作ってる拠点(コミュニティ)っていうのはどんな概念なん?
「モバイルヴィレッジぼちぼち」っていう名前で動く村作りっていうテーマやね。動く家が集まったら動く村になるんじゃないかっていう仮定のもとにコミュニティづくりを始めた。結果、全国の色んな所から集まってきてくれてる。でも定住している人は基本的にいないのよ。
241:動く家と動く村か〜。たしかに成り立ちそうな気がする。
そのコミュニティの拠点はどこにあるの?土地を見つけるのが難しそう
神奈川と山梨の県境で相模湖の近くにあるよ。「廃材エコヴィレッジゆるゆる」っていうコミュニティがある集落の中にぼちぼちのスペースがあって、地主のおじいさんが「やってみな」って言ってくれて土地を借りられてる。創世記は友達を呼んで土地を耕したり、いろいろ手伝ってもらったよ。
みんな荷台にモバイルハウスを作ってる人たちなの?
必ずしもそうじゃないよ。僕はテントもモバイルハウスの一部だと思ってる。だからテントで泊まりに来る仲間もいるし、ただ遊びに来る仲間もいるし、なんなら現地に来たことがない仲間もいる。月額1,000円のオンラインのコミュニティになってて、今は120人くらいメンバーがいるよ。
241:マジで村長みたいなことをやっているわけや。
ナル:これもある種の実験みたいなもんよ。
ということは、いろいろ試してみてどうなっていくかを見ている感じなの?
そうやね。モバイルヴィレッジぼちぼちに関してはそんな感じ。でも正直、個人的には既に完成した感がある。自分の幸せに足りなかったものがホームやと分かって、そのホームを自分で作って、実際に形になって「やべえ」みたいな。そこに仲間がいてくれて、自分も車を停めておけて、コミュニティ内で仲間達が繋がって楽しそうにしてて「もうこれ以上求めることないぞ」って思うよね。今は、そのコミュニティを通じて何が起きるのかをみんなで見ながら楽しんでる。それを僕は”世界のDIY”って呼んでる。
世界のDIYってもう少し具体的に言うとどんな感じなの?
ニュースとかネットの情報っていうのは僕にとっての世界じゃない。僕にとっての世界は「人との直接の繋がり、同じ空気や場所を五感や六感で体感できる繋がり」だね。だから僕にとってモバイルヴィレッジぼちぼちのコミュニティは世界そのもの。みんなで欲しい世界、おもしろい世界をDIYしていったら何が起こるのかを見ようぜって言ってる。
241:よく考えたら自分の身の回り以外のことを気にしすぎる必要ってないよね。ナルがいろいろやってきたのは分かったし、ここで一回まとめてみようか。
あらためて今取り組んでることを教えてくれる?
大きく分けて4つくらいのことをやってる。1つはモバイルヴィレッジぼちぼちの活動の場作り情報発信。2つ目はモバイルハウス作り、3つ目は映像制作でこの2つは仕事になってる。そして最後の4つ目が彼女の家に通うことやね。それが自分の暮らしの中で大きな割合になっている。
241:おお、さっき出てない情報が出てきたね。個人的にはどうやってマネタイズして生活してるかがすごい気になってる。その辺りはPart2で話を聞いていこうか。
後編へ続く。