インタビュー スノーボード

「流行りに乗らず、俺が着たいものを作る」戸田真人が立ち上げた"BLUNT"の裏側に迫る

2022年3月31日

SNSで”BLUNT”と書かれたジャケットを着ているアツい若手スノーボーダーたちを見かけることが増えた。その仕掛け人は、ストリートシーンでスノーボードの表現を長年続けている戸田真人。日本のストリートシーンを引っ張るマサトが「自身のブランドの立ち上げ」という形で新たなフィールドに挑戦する。BLUNTへ込めた思いや背景、着こなしへのこだわりを本人に語ってもらった。

早速だけどBLUNTはどういう背景でスタートしたの?SNSでマサトを含め、色んなライダーが着てるのを見かけるようになったよね。

サポートを受けていたブランドがなくなって、ウエアがノースポンサーになりました。その後、着たいウエアがなくて「それなら自分で作りたい」と思ったのがキッカケです。ただ自分も滑り手として表現を続けているので、そこに中々時間をかけられませんでした。そんな感じでモヤモヤしていたタイミングで、知人から「一緒にブランドを立ち上げよう」と声を掛けてもらい、裏方をサポートしてもらいながらアパレルの販売を開始しました。いろんなタイミングが噛み合いましたね。

マサト以外にもクルーがいるみたいだけど、どんなメンバー構成なの?

まずはスキルと着こなしが間違いないやつを選びたいと思ってました。自分の中でそれは冬生(toui_1129)と俊貴(toshiki_2833)だったので、話をして一緒に活動していくことになりました。自論ですが、いつも同じようなものを着回してるのはライダーとしての意識が足りないと思ってます。2人はその辺りの感度が高く着こなしへの意識も高い。もちろん滑りもヤバいのでBLUNTのクルーとして間違いないですよね。来年からはもう1人若手に加入してもらおうと考えています。すでにBLUNTを着て動き回ってくれてるので、分かる人も多いかもしれないですが楽しみにしててください。

ゲレンデに集まったBLUNTのメンバー

BLUNTのアパレルはどういう場面で着るものを出そうと思ってるの?

自分がスノーボーダーとして着たいものを出そうと思っていて、一発目はアイスホッケーシャツをイメージしたウォームアップジャケットをリリースしました。去年、自分が滑る時にアイスホッケーシャツを着てたのが背景にあります。デザインはブランドの名前を覚えてもらいたかったのでロゴをメインにしています。

241:あのロゴのデザイン目立つから気になって調べたくなるよね。

将来的には、ゴリゴリのスノーボードブランドという感じではなく、ストリートでも着れるものを作っていきたいです。言い換えると、自分がスノーボードで繋がってきた人たちが着たいと思えるものをイメージしています。

ジャケットはアイスホッケーシャツからのインスピレーション

ウォームアップジャケットの販売までに苦労したことはある?

一番初めに工場からサンプルを取り寄せたら、生地感からサイズ感まで全てにおいて俺が思ってたものと違いました。冬にはリリースしたかったので、イメージしてたアイスホッケーシャツをベースに自分が理想とするシルエットと生地感を試行錯誤しましたね。とにかく時間がなかったんですが、納得いくものを出したかったので頑張りました。

BLUNTの哲学というか軸みたいなものがあれば教えてほしいな

スノーボードにもいろんなジャンルがあるんですけど、自分はストリートとかパークとかそういうスノーボードが好きで、その枠から外れないようにしていきたいです。着こなしだと今のライダーよりも昔のライダーの影響を受けてますね。例えばTECH NINEのJustin BenneeとかMark Frank Montoya。ビデオでいうとFORUMのThat.とか好きです。

241:その辺りの時代の着こなしとかをマサトなりにミックスしているんだね。

昔の人たちのほうが色んな組み合わせの着こなしをやって、見られることを意識してるイメージです。今、そういうことをやってるライダーって少ないと思ってて、ずっと同じウエアとかパーカー着てるだけでは印象に残らないと思ってます。昔のTECH NINEのクルーはワンカットずつ違う格好をしてる覚えがありますね。着こなしも色使いも自由なのがスノーボードだし、そこは攻めていきたいです。

主戦場のストリートでの1枚 Photo:@hanaphoto

まずはスノーシーンで着れるアパレルをメインに出していきたい?

そうですね。スノーボード、雪の上で着るアパレルに関してはさっき話した感じにしていきたいです。

今って結構太いパンツの人が増えてますよね。自分的には今流行りの太い感じより、昔の感じの太さが好きなんですよね。

241:昔のスペシャルブレンドとかグレネードみたいな感じかな。

でも逆に「みんなパンツが太くなったら細いパンツが欲しい」みたいなことも思ってて。流行りに逆行したくなっちゃうんですよ。

241:その逆行感は逆にいいと思う。

俺はパンツを下げ目に履くのがデフォルトなんですけど、いろんな着こなしが1本のパンツで楽しめたら最高だと思ってて。パンツの上げ下げでシルエットが変わるウエアとか作りたいですね。みんなが同じシルエットになってたらつまらないじゃないですか。シルエットは特にずっとこだわってきたから自分っぽい形が出せると思ってます。

雪の上のファッションをもっと楽しんで欲しいし、「幅広く受け入れられるシルエットなんだけど尖った着こなしもできる」みたいなアイテムを出していきたいです。

常にオリジナティある着こなしを意識

アパレルの制作には他のライダー2人の意見もあったりするの?

自分の考えだけだと偏りすぎちゃうので、若い子達の意見は大事にしたいと思ってます。この前話した時は、2人とも「太いパンツが欲しい」って言ってましたね。その辺りの意見が反映されて形になっていくのは次のシーズンからだと思います。

でも俺はこだわりが強いから意見を集めてもへし折っちゃう可能性は全然ありますよ。

241:個人的な意見だけど、マサトのこだわりをそのまま着たい人は多いと思う。

正直、自分の名前だけで何かできるほどの知名度があると思ってないんですよね。ただ今年は普段滑りに行かないところで声をかけられたりして、少し自信が湧きました。「自分にも少しは影響力があるのかもしれない」と思いましたね。

241:おれの周りのジブが好きな子はみんなマサトのこと知ってるけどね。

いやー、そんなことないですよ。とくに新潟周りのスキー場とかでは誰も声をかけてくれないんで、「まあこんなもんか」って思ってました。

241:いやー、パークで見かけでも声かけづらいよ(笑)

俺、多分スキー場で1番ニコニコしてますよ!でもそうやって声かけてもらえたりしたことで「自分でブランドをスタートできそうだな」って思ったんです。

滑り終えて笑顔のBLUNTクルー

業界のトレンドとか流行りは意識してるの?

土俵が違いますね。俺は自分が着たいものを作って、好きなようにやろうと思ってます。流行り物は冬生と俊貴にアンテナ張っておいてもらいます。

241:マサトの表現をみんな着たいと思ってるはずだからそれでいいと思うな。

なぜBLUNTっていう名前になったの?由来を知りたい。

名前は1番時間を使いましたね。自分が思いつく名前って男臭いやつとか汚い言葉だったり普段使われてないような言葉ばっかりで、かわいげのある名前とか考えたんですけど、出てくるわけなくて。いろいろ考えすぎて「一回頭の中を整理しないとダメだな」って思って、シンプルな名前を考え直しました。

そのときに出てきたのが”BLUNT”っていう言葉でした。BLUNTには「正直、率直」っていう意味と「ぶっきらぼう、にぶい、切れ味が悪い」みたいな意味があって、いいところも悪いところも含めて自分に当てはまると思います。スノーボードの技の名前の方向にも濁せるところもしっくりきたし、その意味を踏まえて長く愛せる名前だと思いました。

BLUNTのロゴ

241:おれはてっきりフロントブラントから取ってきたんだと思ってた。

はじめからスノーボードの方の意味では考えてなかったです。

241:見る人によっていろんな意味の捉え方ができていいね。

そうですね。世間一般の人にはそういう意味で伝わってればいいかな。本当に俺のことが好きで見てくれてる人たちにはBLUNTの意味がちゃんと伝わってるだろうと思ってます。

241:(かっこよすぎる・・!)

"素直"にスノーボードが好きなのが伝わってくるインタビューだった

BLUNTのロゴのデザインは誰が書いたの?

最終的に自分で書きました。自分の考えを話して、知り合いに書いてもらったりしたんですけど、自分の考えを伝えるのが下手でうまく表現できなかったんです。「それならもう自分で書いてみよう」と遊びで書いてみたら結構いい感じになって、それがロゴになりました。気付いてる人もいるかもしれませんが、ジャケットのBLUNTの文字はロゴと微妙に違ってて、マジックペンを使って左手で書きました。

241:左手で?

BLUNTの「ぶっきらぼう」の意味とかは見せなくてもいいかなって思ったんですけど、あえてそれを表現したくて利き手じゃない左手で書いてみました。初回限定の左手サインのロゴです。

左手で1発で書いたというBLUNTロゴ

241:今ってオリジナルアパレルとかすぐに作れるけど、BLUNTみたいに掘れば掘るほど意味が分かってくるのはかっこいいよね。全然価値が変わってくる。

あえて聞いてみるけど、どんな人達に着てもらいたいとかある?

俺のこと好きな人達には、まず着てもらいたいと思います。ライダーとして、「あの人の真似をしてみたい」と思って着てもらえることは嬉しいことですし、それがライダーの価値だと思ってます。

俺が考えるスノーボードの着こなしは、上下セットアップのウエアを着る感じではないです。普通のパーカー着るだけでも、一枚上に羽織ってアクセントを加えたりしてオリジナリティを表現したいですよね。みんなにも着こなしをスノーボードの遊びの1つとして捉えて表現してほしいです。

クルーの冬生と着こなしを楽しむ

「明日はこれ着ようとか、あのロケーションはジャケットでいこう」とかそういう部分を楽しんでもらえると嬉しい?

そういうのはめちゃくちゃ嬉しいですね。ゆくゆくは濃い色とか色味を出していきたいです。

241:いいねー、この先がめちゃくちゃ楽しみだよ。

ストリートはBLUNTで間違いないだろう

ところでウォームアップジャケットがもう売り切れてるんだけど、どうしたらいい?

今回は数量限定でプレミア感込みで作っているので、増産の予定はありません。リメイクして来シーズン出す可能性はあるけど、なにも決まってません。現時点では、俺とかBLUNTのクルーを見て買ってくれたファンの人達が多いと思うので、そういう人たちの宝物になれば嬉しいです。

241:じゃあもう今は買えないのか!それ含めてかっこいいと思ってしまうな。みんな次のアパレルがリリースされるのを楽しみにしてると思うし、今後のBLUNTの動向も取材させてね。

BLUNTの動向から今後も目が離せない Photo:@hanaphoto

BLUNTについて

BLUNT公式ウェブショップ

URL:https://blunt.base.shop/

横乗りカルチャーど真ん中で育ってきた戸田真人が自分のスタイルを表現するために立ち上げたBLUNT。BLUNTは「ぶっきらぼう、愚直」という彼のスタイルそのままでこのブランドの立ち上げも、とにかく周りを巻き込んで長く太く横乗りを楽しんでもらいたい、という意味が込められている。来季に向けてアパレルだけでなくスノーウエアのプロデュースも手掛けていく。

BLUNTサイトより(https://blunt.base.shop/about)

BLUNT Instagramアカウント

戸田真人 Instagramアカウント

  • この記事を書いた人

Takahiro241

年間滑走100日の横乗りLOVER。スノーボード歴15年、サーフィン歴3年、スケボー歴8年。ランニング、サッカー観戦、カメラなど趣味が多いです。

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