X-TRAIL RAIL JAMでの活躍が記憶に新しい玉村隆(以下、タカシ)。数々のコンテストで入賞してきた輝かしい実績だけではなく、ストリートでも映像を残し、活躍しています。数年前からBLAZYを結成し、3作目となる『火達磨-HIDARUMA』は海外メディアからも称賛され、国内ストリートスノーボードシーンでの立ち位置を確固たるものにしつつあります。今回はストリートシーンを主戦場にするタカシの活動を”BLAZY”と”玉村隆”の2つに分けて深く掘っていきたいと思います。
──X-TRAIL RAIL JAMのトランスファーのフロントテールは痺れたわ~
タカシ:最後の最後でメイクれてよかったです。最後は何も考えずに流れに身を任せました(笑)。でも、あのメイクしたときの空中の感覚は今でも覚えてるっすね。
241:というわけで、玉村隆というスノーボーダーを深堀りさせて欲しい。
ムービークルー『BLAZY』について
──まずは活動の1つのBLAZYというクルーについて簡単に教えて欲しいな
タカシ:埼玉ブラッシュで7年くらい前にフミヤくん(岡本史哉)と出会ったのがきっかけです。その時に「おれらもクルー作りたいな」みたいな話しをしてました。周りの名前が売れてる人らは、みんなどこかしらクルーとかチームに入ってて、「誰もおらんなあ」ってなってて。フミヤくんと話すうちに、トントン拍子で「2人でやるか」ってなってやりだした感じっすね。発足して1年目はパークでずっと撮ったりしてて、ストリート主体になったのは実は最近なんすよ。4年前くらいからやりだしたって感じですね。
昨年リリースした3本目のムービーについて
──『火達磨-HIDARUMA』で作品自体は何本目になるん?
タカシ:3本目ですね。
──2021-22シーズンはどういう感じで動いてたん?
タカシ:ずっと東北メインで、たまに白馬みたいな感じっすね。フミヤくんが、基本的に冬はアメリカに行っちゃってるんで、ダニーくん(大久保真司)ってやつがもう1人メンバーにいて、そいつと国内で2人で動いてたって感じですね。
241:まとめると、BLAZYは3人のクルーで、タカシとダニーくんが国内で動いてて、フミヤくんが国外って動いてるって感じなんやね。
──去年は国内を中心に2人で動いてたと思うけど、主にストリートでどういうコンセプトで動いてたん?
タカシ:基本的に人がやってたところは極力やらんようにしてるっす。やる時は、過去にやってた人のトリックを越えられそうならやります。でも、そもそも俺らが全然スポットを知らないんで、後々見てみたらスポットが被ってるとかよくあるっすね(笑)
「人と被らないように」ってのはこだわってるっすね。
241:なるほど、あのスポットチョイスにはこだわりがあったんや。
ストリートでのスノーボード
撮影について
──撮影するスポットってどうやって見つけるん?
主にGoogleマップです。公園とか調べたら簡単に出てくるんで、ストリートビューとかで拡大して見て、階段とか手すり見つけたら行ってみるみたいな感じです。前日にある程度、場所は決めておくんですけど、基本的に助手席に座ってるやつがGoogleマップ見て、気になったところがあったら運転手に伝えて見に行くみたいな感じっす。まあデートみたいなもんすね(笑)。俺らGoogleマップあるから見つけられるけど、「昔の人どうやって見つけたんやろ」ってたまに思ったりします。
──ストリートの撮影で大変なことってどんな部分?
タカシ:基本2人なんで、セットアップ(準備)が大変ですね。地獄っす。雪をかいたりするのにもう一人欲しいです。撮影自体も基本2人でやってます。OSHIクルーとたまに動いたりしてたっすけど、やっぱり基本2人なんで地獄っすね(笑)。
──映像の編集はどんな感じの役割になってるの?
タカシ:『火達磨-HIDARUMA』は各々がパートを編集してたりしますけど、基本自由っすね。エンディングとオープニングは今回おれがやりました。
毎年感じている成長
──作品は3本目って聞いたけど、1本目から変化とかあったりする?
タカシ:クオリティは確実に上がってきてる感覚があるっすね。編集、撮り方、トリックチョイスとかスポット選びとかのスキルがあがってます。毎年どんどん楽しくなってるっすね。
──ストリートに対する知見とか経験はあったん?
タカシ:おれがちゃんとストリートを始めたのはInkムービーの時なんすよ。そこで、現場で結構教えてもらいました。クルーのダニーくんはおれがInk出る前からストリートやってたりはしてましたけど、まだまだ俺らは知識がないっすね。戸田真人くんとかとやったことありますけど、やっぱりあの人すごいっすわ。
241:それって具体的に何がすごいの?
タカシ:基本的な段取りがめっちゃ早いっす。ストリートはリップをイチから作るんですけど、あんまり分かってないやつが作るとやっぱり調子悪いんすよね。それでメイクできひんとか普通にあるっす。アイテムに対しての作り方とか形状、パンピングの配置とかそういう部分です。レベルが違う人はほんまに違います。
241:へぇ~、一緒に現場入ったらすぐに分かるもんなんやね。
──撮影って1箇所だいたい何分くらいで撮るもんなん?
タカシ:基本はまちまちですけど、10分の日もあれば1日かかる時もあります。それは場所にもよりますし、自分が納得できるかどうかです。あとはキックアウトとかもあるっすね。
241:そのキックアウトとかのリアルな話は気になるなあ。ああいうのって実際どうなの?
タカシ:こっちがちゃんとしてれば基本大丈夫です。礼儀とかリスペクトは大切にしてるっす。
241:なるほどな~。おれとか怒られたらその後、萎縮してしまうわ。
タカシ:めっちゃ分かるっす。お墓とかはやんないっすね。ブチギレられそうじゃないですか(笑)。
──『火達磨-HIDARUMA』で自身のパートだとどのカットに思い入れがある?
タカシ:やっぱり最後のカットかな。あのロングレールは2日間かかったっすね。
241:着地の後、めちゃくちゃタイトやもんな。
タカシ:50-50やし、サクッと行けるっしょって思ったんですけど、2日間かかったっすね。
241:2日間も深追いするのって普通のことなん?
タカシ:そうですね。1日で終わるってことはあんまり無いです。長くなると焦りがでてくるっすね。もしキックアウトされたら挑戦できひんし悔しいやろなあ、みたいな。
メンタルのコントロールについて
──天気って撮影の重要な要素やと思うんやけど、そのあたりの不確定要素との付き合い方はどんな感じなん?
タカシ:天気は、吹雪とか悪天候ならオフにするか、スキー場に行っちゃうっすね。ある程度は、しょうがないと思ってやってます。ストリートの撮影って本調子のことは、めったにないっす。身体のコンディションでいうと、基本どこかしらが痛い。そんな中でも気持ちは無理やり、もっていってるっすね。普通の仕事と同じで、スイッチ入れへんとあかんタイミングがあるっす。
241:やっぱり自分でスイッチ入れて気持ちをもっていくんやな。
タカシ:おれは音楽聞いたりタバコでスイッチ入れてるっす。
──ストリートでド派手にやられたりすると思うんやけど、その後のメンタルの上げ方というかコントロールを聞きたい
タカシ:おれは多分コントロールが下手くそで、すぐやめるタイプです。でもメイクできる時は、意外とムキになってる時が多いかもしれないっすね。気持ちが落ちるというよりは、悔しさの方が大きい。やられてみたらそんなに痛くないことも多かったりするし、完全にその時の気持ち次第っすね。気合いがあるかどうかです。
241:X-TRAIL JAMの時かなりトランスファーにこだわってたと思うけど、結構メイクするまで回数重ねたやん?あの時どんな気持ちやったん?
タカシ:5本くらいでメイクするやろって思ってたんですけど、まさかの沼っちゃって、焦りっていうか普通にムカついてました(笑)。ダニーくんがセコンドついてくれてたんで、それが一番良かったっすね。でももっといろいろやりたかったっす。
241:おれ結構怪我が多かったりして、その日の引き際って大事やと思ってんねん。
──引き際の見極めとか怪我しないために心がけてることってある?
タカシ:自分に正直になることっすかね。周りの目とかあって意地張って無理やりやったりすることもあるんですけど、そういう時って絶対怪我するんで完全にイメージしてからやるようにしてるっすね。そのイメージっていうのは前の日の夜からやってます。
241:プロフェッショナルやねえ。リアルな話が聞けて面白いわ。
BLAZYの表現活動
──BLAZYとして表現したいこと、目指している形はある?
タカシ:個人的には「それぞれが名前を売るための都合のいい場所」やと思ってて、がっちりルールとかはいらんなって思ってます。他のクルーも世界に行くのが夢だと思うんで、結局そこやと思います。BLAZYとしては「かっこいい映像を作りたい」って感じですね。それは、ちゃんとした作品としてです。
241:フミヤくんもTrollhaugenで活躍してるよね。タカシもチャンスがあれば海外を狙ってる?
タカシ:狙ってますよ。円安が早く落ち着いてほしいっすね。
241:個人的な感想だけど、あのレベルの3人がBLAZYで一緒にやってるのは目立てる感じがするよね。
タカシ:ストリートってやればやるほど評価されるのにガッツリやるやつが少ないなって思ってるっす。やったらやった分だけ評価されるから、もっとガッツリやればいいのにって。
241:そこまでを目指したいっていう熱量がある人の母数が少ないか、概念として認知されてないかっていう可能性もあるよね。BLAZYの発信でもっと世間に認知されればいいね。
──ストリートやる人が増えて、世界と戦えるやつがでてきたらおもしろそうとかあったりする?
タカシ:いや、あまりそういう感じはないっすね。とにかくひたすらやって、おれらの周りが目立てれば最高かなって。
241:結果的に映像とか活動見て「こういう風になりたい」って人が増えたらええよね。
タカシ:そうですね。それがベストです。おれもジブシーンへの入り口はそういうところなんで、そうなってくれる人が増えると嬉しいっす。
──今年のBLAZYの映像はどんな感じになりそう?
個人的に色々シークレットで動いてるところもあるんですが、各々がやれる場所でやれるだけパートを撮影して最後組み合わせられればと思ってます。絶対に映像は出しますよ。
──タカシがジブにハマっていった話も聞きたいな
ジブに感銘を受けたのは、阿部祐麻くんを石打で見かけて「やば、かっこよ」って思ったのがキッカケっすね。
後編に続く