インタビュー スノーボード

オフトレの経験とユーザーの声を反映した機能開発の裏側丨オフトレカメラ 竜さん&祐衣さんインタビュー

2023年3月9日

オフトレ施設で必ず見かけるといっても過言ではないほどポピュラーになりつつあるオフトレカメラアプリ。自分は昨年秋頃にアプリを購入して使っています。特にオフトレに適したUIと機能に感動しました。これはぜひともオフトレカメラを作っている人にインタビューしたいと思ったので、Twitterで呼びかけを実施。結果、自分のツイートに反応してくれた人のおかげですぐに繋がることができ、今回のインタビューが実現しました。

練習熱心なスノーボーダー、スキーヤーなら一度は目にしたことがあるであろうオフトレカメラの裏側をお届けします。

コアなフリースキーヤーの二人

自身のフリースキーとアプリ開発のキッカケ

──お二人は普段は何をされてるんですか?

竜さん:二人共ソフトウェアエンジニアの仕事をしています。普段は仕事かスキーしかしていないかもしれないですね笑。実は一昨年、長野県に移住しまして、平日は仕事の後オフトレして、土日はオフトレか別のアウトドアをやってます。

──フリースキー歴はどれくらいなんですか?

竜さん:ぼくは10年行かないくらいです。

祐衣さん:わたしは4-5年ですね。

樹氷をバックに

──長野に移住したキッカケはなんだったんですか?

竜さん:都内からだと、スキー場が遠すぎて。以前はオフシーズンは仕事終わりに高速を使って千葉キングスに通っていましたし、冬も都内からだとどのスキー場も正直遠くて。二人とも在宅勤務なこともあって、東京に住み続ける理由があまり無いねって話になりました。二人で場所を吟味して、長野県に引っ越すことにしました。

スキーヤーならではの前撮り

241:いいですねえ。全方位1時間くらいで適度に都会ですよね。

二人:去年は50-60日くらい滑りました。平日仕事してナイターに行って土日はひたすら滑るみたいな生活です。

241:もしかしていいづなリゾートナイター(通称リゾナイ)ですか?

二人:まさにそうですね笑

──仕事の経験とか知見をいかしてオフトレカメラを作ったんですか?

竜さん:そうですね。小さい頃からプログラミングが好きで、大学時代にはハッカソンというアプリを作る大会によく出ていました。小さいアプリを作るのが好きで、その延長線上のオフトレカメラなんです。

241:なるほど、まさに仕事と趣味がうまい具合に重なってますね。

──このアプリを開発しようと思った経緯とかキッカケってなんだったんですか?

竜さん:もともとS-airというウォータージャンプの施設に通っていました。そこでレッスンも受けていたんですが、、自分の中では「上手くいったかも」って思ったジャンプでも、コーチに動画を撮ってもらった動画を見ると「なにこれ超ダサい」みたいに思うことがよくありました。エアが低いとかグラブが短いとか。そういう自分の想像と実際の見た目のギャップがすごく嫌だったんです。そのギャップを埋めるためにがむしゃらに練習するのも1つの手段ではあるんですが「今、自分がどんな感じのジャンプをしているか」が分からないとそもそも直しようがないんですよね。それで動画を撮ろうと思って、スマホの標準カメラアプリで録画してみたんです。それが結構めんどくさくて。S-airだとウォータージャンプなんで基本的に手が濡れていて画面を触りにくいんです。iPhoneのタイマー機能を使ってもみたんですけど、それもあんまりフィットしなくて。撮った動画をその場で見るには、カメラロールを開いてその中から動画を選ぶのが面倒で結局見なくなっちゃいました。

そこでオフトレ専用のアプリを作ってリリースしてみたら同じことを思ってる人にウケるんじゃないかって思ったのが始まりです。

祐衣さん:夫と2人でオフトレに行っていたので、2番目に飛ぶ人がもう一人の動画を撮る、というのをやっていたこともあります。ただ後に飛ぶ方は動画が撮れないのでどっちが先に飛ぶ?って笑。その時に自分の動画は自分で撮れたらいいなって思いました。

──市場に既にあるアプリだとどういったところが微妙だったんですか?

竜さん:いくつか試したんですが、すごくフィットするものはなかったです。タイマー付きの録画アプリとかは普通にあるんですけど、オフトレ特有の状況では使いづらいことがありました。例えば、みんな濡れてて、さらにグローブしてるので、ボタンが小さいと使いにくい。他の例でいうと、オフトレは5秒くらい撮って、その後の5分くらいはスタート台に歩いて戻るので画面が点きっぱなしです。その間、スマホのバッテリーが無駄になるんです。僕は古いiPhoneをずっと使ってたから画面が点きっぱなしだとすぐにバッテリーが落ちてました。5分経ったらiPhoneが「ああごめん」みたいな笑

そういう特殊な環境を考えると、既存のアプリはあまり快適ではなかったんですよね。

祐衣さんオフトレ風景

アプリリリースからその後の機能改善について

──初リリースの時はどんな機能があったんですか?

竜さん:初リリースでは。5秒20秒30秒60秒の4通りから録画時間を選択できて、省電力でカメラがオフになるという、おおむね2つの機能だけがありました。

241:つまり、録画時間を指定できるのと、録画が終わったらカメラが切れて、省電力になるってことですね。

竜さん:はい、今のオフトレカメラに比べると最低限の機能しかありませんが、完璧なものを最初から作るのは現実的ではないので、二人とも一番初めは本当に必要な部分だけを作って、なるべく早くアプリを世に出すことを目標にしていました。

241:仕事もそうですけど、完璧を目指さずにまずはやってみるって大事ですよね。

竜さん:はい、おかげでとても早い段階で本当にオフトレ施設で使われるのかを確かめられたと思います。

──そういう機能を載せてリリースされたわけですが、はじめはどんな手応えだったんですか?

竜さん:最初期は私たちの知り合いのスキーヤーがインストールしてオフトレ施設で使い始めてくれたのがキッカケで、さいたまクエストで結構使われるようになりました。リリース前は「10人くらい使ってくれたらいいや」って思ってたんですが、想定より多くの人に使われていて嬉しかったですね。目の前で知らない人が使ってるのを初めて見た時はびっくりしました。

241:自分が知らないところで自分のプロダクト使ってくれてるって一番うれしいことですよね。

二人:嬉しかったです。話しかけようか迷いました。

241:俺ならイキって話しかけちゃいますよ笑

竜さんオフトレ風景

──たくさん機能があってかゆいところに手が届いてるなって思うんですけど、そこに至るまでってどういう道筋だったんですか?

竜さん:それは大体2パターンあります。1つ目はそもそも自分たちがオフトレしているので「ここが使いにくいよね」って自分たちから出るパターン。2つ目はユーザーの声から機能を考えるパターンです。実際に対面で話を伺ったり、TwitterとかのSNSで意見をもらったりします。

241:ツイートしてる人がいらっしゃるんですね!

竜さん:たくさんいます。。使いづらいところだけじゃなくて不具合とかも報告してくれてとても助かってます。以前よくあったのは「オフトレカメラの画面が全員同じなので他人のオフトレカメラを間違って使ってしまうという」という課題です。この意見を基に、今は画面に好きな文字を表示できるようになっています。

241:便利な面もありつつ、ぼくは遊び心が効いてるなって思ってました。結構みんな面白い名前設定してて、飛ぶ前にスマホでスタイル出してきてますよね。ご自身の体験とユーザーからの声を生かしたパターンがあるということがよく分かりました。

241のオフトレカメラ

──アプリストアのコメントとかも参考にしてるんですか?

はい、しています。

──改善の要望に対応するところで難しさとか課題とかありました?

竜さん:リクエストでもらったわけではないのですが、オフトレのスタート地点にあるスマホ台って初リリース当時はそんなに普及していなくて、普通のカメラアプリのように録画ボタンを画面の一番下に配置していました。その後しばらくしてから、スマホ台が普及したんですけど、台に置いた時に下にボタンがあると押しづらいんです。昔から実はオフトレカメラって画面のどこを押しても反応はするようにしてたんですけど、画面の下の方を頑張って押してる人を結構見かけてそれをどうやって解決するのかを考えました。色々なデザインを考えて、オフトレ施設で実際に使いながら、どういう配置が最適か考えました。

開発途中の様子

竜さん:結局、下半分はスマホ台に置いたら隠れてしまうので、オフトレ中にはあまり触らないボタンを集めて、画面上部によく使うUIを配置した今のレイアウトに纏まりました。ボタンの挙動にもこだわっていて、実は各ボタンのタッチを判定する範囲もボタンの見た目より大きくしてます。グローブをしたまま触らないといけないので。そういうことを考えるのは大変ですけど、一番楽しいところでもあります。

大阪キングスでもほとんどの人が使っている

祐衣さん:開発的な話になるんですけど、特にAndroidは様々な機種があってそれぞれ違うカメラを搭載しています。カメラのハードウェアとやりとりするためのシステム上の規格が、欲しい機能に対応していなかったりと、意図通りにならないことは結構ありますね。

241:Androidで使ってる人もよく見かけます。

竜さん:そうですね。Androidで使ってくださってるユーザーも多いんですけど、どうしても機種によっては起動しなかったりするので、その都度お問い合わせも受け取っています。頑張って調査をしているのでこの場を借りてお詫びと改善に向けて頑張ってますと言わせてください笑。手元にはIPhone1台とAndroid1台しかないので。

241:結構古いAndorid使ってる方も見かけます。

竜さん:僕も気付いたら古代のiPhoneになってたりするので、すごく分かります。

オフトレアプリの今後について

──オフトレアプリは2人の中で結構完成形になっているんですか?

祐衣さん:撮影するためのアプリとしては結構いいところまできてると思ってます。その上でオフトレあるいはスキー・スノーボードを練習してる人を手助けするアプリというところまでいきたいなっていう野望はあります笑。

竜さん:個人的には2割くらいしか完成してないです。オフトレの上手くなる過程は、まず現状を記録→記録を見て分析→新しいことを試す、そしてまたその様子を記録するっていうサイクルだと僕は思っています。オフトレカメラが今サポートできるのは現状を記録するところだけなんですよね。後ろから動画を撮るだけなので。将来的には、上手くなる過程のサイクル全部をオフトレカメラが助けてくれるみたいな感じにできたらいいですね。そういう機能を足していったらみんなうまくなってみんなハッピーだと思います。

スタイルのあるバックフリップ

241:なんか普通に他のスポーツでもすごい需要ありそうな気がしました。僕はトランポリンで、体育館に行くんですけど、体操の人らも結構僕らと同じようなことやってるんですよね。スマホを立てて、録画して演技してそれを確認するみたいな。オフトレカメラを教えてあげようかと思いました笑。

二人: 最初は「他のスポーツでも使えるんじゃないか」みたいな話はあったんですけど、スキー・スノボのオフトレってちょっと特殊なんですよね。ジャンプ一本飛んだら、スマホの置いてあるスタート台に歩いて戻らないといけない。体操だったらその場でカメラを止められるから、標準のカメラでもあまり困らないのではないかと思いました。それでアプリの名前がオフトレカメラになったんです。ただ、さっき話してたみたいな「スポーツの動きを分析する」というところまで拡げられたら他のスポーツにも拡げていくのはありだと思います。

241:自身の体験から作ってリアルなユーザーの声を聞いてアップデートしてこられたのが素晴らしいと思ってます。

祐衣さん:オフトレカメラっていうアプリの名前はプラスに働いたと思っています。オフトレ専用ということがユーザーに伝わって、ついでに覚えてもらいやすいんじゃないかなって。

241:たしかにそうですね。

こだわりと開発の中で意識していること

──オフトレカメラのアイコンはなにか意味あるんですか?

竜さん:「これでどうかな?」っていう感じであっさり決まりました。カメラってわかってもらってタイマー感が出ていればOKという感じでした笑。

オフトレカメラのアイコン

241:もしかしてアイコンにも何か宿ってるのではと思ってました笑。個人的な感想なんですけど、何秒後に開始して何秒間録画するかを自由に設定できるのがめちゃくちゃいいと思ってます。自分は録画ボタンを押してすぐにスタートできないタイプなんですよ。落ち着いてスタートしたいから結構ボタン押してから間隔が欲しいんです。でもそれって人によって違いますし、それが自由に設定できるのが素晴らしいです。

竜さん:ありがとうございます。プリセットを3つ設定できるので、施設ごとに登録したり、大きい台を飛ぶ人は滞空時間で切り替えてるらしいです。

241:確かにクエストのメガビッグを飛ぶなら録画時間の長さが必要ですよね。

──他に何かこだわりはありますか?

祐衣さん:これは気をつけてることでもあるんですが、個人情報等をむやみに取得しないように心がけています。2人で運営しているので、必要以上の管理コストをかけないようにしています。コストでいうと、インフラコストを抑えるためにスタンドアローンで動く機能を優先的に開発するとか、そういう工夫もしています。開発上の気をつけるポイントになっちゃいましたね。

241:開発系の人たちって結構スキーとか横乗りが好きだったりするのでいい話です。

竜さん:あとは広告を入れないことにこだわりがあります。言ってしまえば自己満足なんですけど、広告を表示するくらいなら、お金を出して買ってもらって、一番ストレスのない快適な状態のものを渡したいです。なので「広告を載せない」という鉄の掟があります笑

241:すごくわかります。僕もブログやってますけど、Google広告とか載せずに見やすさを大事にしてます。そうやって細かいところまで気を遣われてるアプリだから、みんな使いますよね。もうほとんどの人が使ってる気がしてます。

──買いきりのアプリなのに安すぎませんか?

竜さん:え、来月から5,000円にしようかな笑

241:昔は無料でしたよね?

二人 : 当初から有料で公開するつもりだったんですが、最初の三ヶ月間は一定数の人に使ってもらって様子を見たかったのと、まだ十分機能が無いこともあり無料で公開しました。買い切りのアプリで、、新しく購入する人が減っていって売上がどんどん落ちるかなって思ったんですけど、それは意外と大丈夫でした。新しくオフトレを始める方も毎年結構いらっしゃるみたいです。

シーズンの過ごし方

──今シーズンはどんな感じで過ごしてますか?

二人 : いいづなリゾートと栂池のシーパスで、平日はナイター、休日は栂池という感じの予定です。山全体を滑りつつ、パークも攻めたいなって思っています。最近ビーコンを買って、今年からBCも始めました。

BCでのスキー

241:製作者としてオフトレの成果も出さないといけないですよね笑。オフトレカメラの最大の目的はオフトレでやったことを山でメイクするところにあると思いますんで。

二人 : それはもう耳が痛いですね。ただオフトレカメラのおかげで、山で動画を撮ってもらった後に確認して、落胆する回数は減った気がします。

同じように、オフトレカメラを使ってくれている人たちが少しでも自分の目指すスタイルに近づけたなら、とても嬉しいです。

インタビューのその後

なんとオフトレカメラのおかげ(?)で竜さん大会初入賞!有言実行です!

オフトレカメラについて

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  • この記事を書いた人

Takahiro241

年間滑走100日の横乗りLOVER。スノーボード歴15年、サーフィン歴3年、スケボー歴8年。ランニング、サッカー観戦、カメラなど趣味が多いです。

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